死んでもあなたに愛されたい
「……っ、ひ、とみ……」
唇を離すと、目を見開く魁運がいた。
うしろの人影がかすんでいく。
と同時に、色素のうすい茶色い瞳も閉じていった。
魁運の口が、再び近づいてくる。
え!? これは……!
セカンドキスの予感!
いいよ! 魁運にならいつでもあげる!
さあ! カモン!
触れたのは……右の肩。
「……えっ? か、魁運?」
「…………」
「ね、寝てる!?」
魁運からのごほうびキスじゃなかった!
もたれかかっただけだった! 残念!
睡魔に負けちゃうくらい、そうとう意識を持っていかれていたんだろうな。
がんばったね、魁運。よしよし、いい子。
「ひとみん! カイは平気!?」
「あ、マユちゃん先輩! ぎりぎりセーフですよ」
「そう。ならよかった……。あの不届き者はわたしが始末するわ。オネエを怒らせると怖いんだから」
マユちゃん先輩、ガチギレですね。
思う存分やっちゃってください。あたしの分も頼みます。ぼっこぼこのぎったんぎったんにして三枚おろしでよろしく。
あたしは、今、魁運のまくら係で忙しいので。
気持ちよさそうな寝顔を、じっくりたっぷり眺めさせていただきまーす!
「ん?」
「……っ、」
「魁運……?」
全然気持ちよさそうじゃない。
息は浅いし、苦しそう。
どうしちゃったの?
どうしたら魁運を救える?
――その日、魁運が目を覚ますことはなかった。