死んでもあなたに愛されたい
山へ突っ走って、約1時間。
池がない。
現在地も不明。
詰んだ。
山の中へ入って、携帯をライト代わりにさまよって。
方向感覚が狂った。
池さえ見つかればなぁ……。
今の時期はぎりぎり咲いてるはず。
ここは幽霊さんナビを使わず、自分で見つけたい。
これはあたしの意地だ。
「スイレンちゃ~ん、どこにいるの~~?」
おーい。
この恥ずかしがり屋さんめー。
隠れてないで出ておいでー。
……いないな。
これで雨まで降ったら……。
と、考えたら、ポツポツと地面が濡れる。
まじかよ。
雨、降り出しちゃった。
タイミングがひでえ……!!
雨合羽も折りたたみ傘も持ってきてないよ。
なんなら携帯しか所持してない。
ちなみに残りの充電4パー。
こりゃまずい。
本降りになる前に見つけないと!
……まあ、待て。あわてるな、自分。
悪運が続いたら。
そのあとは。
きっと、いいことが起こる!
「あー! あった!!!」
獣道の奥に進むと、景色が開けた。
そこには、不格好な円の形をした池。
水面に、白い花が浮かんでいた。
ほらね! いいことがあった!