死んでもあなたに愛されたい
あの花……おじ様に見せてもらった写真と同じだ。
あれがスイレンでまちがいない!
悪天候の中でも、池の真ん中に咲くスイレンはひどくきれいだった。
雨音を立てる水面に、閉じた花弁がふやけて反射してる。
山の中には、街中とは比にならない黒いモヤがかかっていたけれど、池の中には一切見受けられない。
清らかな心。
まさしくその言葉を体現しているよう。
あの花を贈ったら、あたしの想いが届くかな……?
届けたい。
がんばって届かせる。
なので、池の中に入ります!!
「よーし! がんばるぞ!」
ここからが本番だ!
スニーカーも、靴下も、ブレザーも、カーディガンも、さようなら。またあとで。
池にたどり着くまでに、とっくに泥だらけ。
雨にも打たれてるんだ。
ずぶ濡れで池臭くなっても、今さら気にしない。
行っちゃえ、あたし!
「ひぇっ、つめたっ!」
着水させた足元から鳥肌が立つ。
秋の水遊びはやめたほうがいい。よい子は真似しちゃだめよ。
あたしはよい子じゃないから行っちゃいます!
「い、意外と深い……!?」
中央に近づくにつれ、体が沈んでいく。
もう胸元まできちゃったよ!
でもあとちょっと……あとちょっと……。