死んでもあなたに愛されたい



あの花……おじ様に見せてもらった写真と同じだ。

あれがスイレンでまちがいない!



悪天候の中でも、池の真ん中に咲くスイレンはひどくきれいだった。


雨音を立てる水面に、閉じた花弁がふやけて反射してる。



山の中には、街中とは比にならない黒いモヤがかかっていたけれど、池の中には一切見受けられない。


清らかな心。

まさしくその言葉を体現しているよう。



あの花を贈ったら、あたしの想いが届くかな……?



届けたい。

がんばって届かせる。


なので、池の中に入ります!!




「よーし! がんばるぞ!」




ここからが本番だ!


スニーカーも、靴下も、ブレザーも、カーディガンも、さようなら。またあとで。



池にたどり着くまでに、とっくに泥だらけ。

雨にも打たれてるんだ。


ずぶ濡れで池臭くなっても、今さら気にしない。



行っちゃえ、あたし!




「ひぇっ、つめたっ!」




着水させた足元から鳥肌が立つ。


秋の水遊びはやめたほうがいい。よい子は真似しちゃだめよ。

あたしはよい子じゃないから行っちゃいます!




「い、意外と深い……!?」




中央に近づくにつれ、体が沈んでいく。


もう胸元まできちゃったよ!

でもあとちょっと……あとちょっと……。


< 160 / 329 >

この作品をシェア

pagetop