死んでもあなたに愛されたい
ただでさえ体力がないっていうのに……。
スイレンを盗んだ罰なの?
それにしてはタチがわるいですね!?
このまま池の中にいたら体温を奪い取られる。
激しい雨音に急かされるように、ぐっと両腕に力を入れた。
「おっりゃあああ!!」
右足の痛覚をガン無視して、無理やり陸に上がった。
打ち上げられた魚みたい。
ぬかるんだ地面に横たわり、酸素をお腹いっぱい吸い込んだ。
「はあ、はああ……。もう無理……。動けない……」
今日はツイてない。
だけど、スイレンは、ちゃんとこの手の中にある。
ならいいか。
筋肉痛になっても、風邪引いても、いいや。
生きた心地がしないのも、今は、いい。
不意に、雨風が強くなる。
ぴくりとも動こうとしないあたしに、濁った人影がうようよと群がってきた。
雨は黒色を貫いて、透けた眼球を刺す。
「……あはは、心配してくれてるの?」
あたしってば、愛されてるなあ。
……うん、そうだよね。
あたしの味方は、最初から、あたしだけじゃなかった。
こんなにいた。
あたしの世界すべてが、ずっとそばにあった。