死んでもあなたに愛されたい



ひとみが幽霊に愛されてる?

俺みたく、つきまとわれてるんじゃなく?


霊感のない俺には、いまいち理解しがたい。




「ひとみちゃんがいい子なのは、霊の感じからして一目瞭然だったよ。……ひとみちゃんも、死後の存在が見えていることもね」


「……み、えて、る?」




何が。

幽霊が? ……この、呪いも?




「よほど深く、霊と結びついているんだろうね。でなければ、あの異質さの説明がつかない」


「そ、そんな、こと……」


「ほら、ひとみちゃんは、あの本家の巫女様と双子だろう? ひとみちゃんにも本家の血が流れているなら、それほどの力を持っているのはおかしな話じゃないよ」




俺にはわかりっこない世界。

もし、ひとみには、わかっていたとしたら。


あのやさしさが、なぐさめではなく、真実なら……?



ちがう、そんなわけない。

そうやってかたくなに決めつけていた。


何も知らなかった。



言ってくれていたら……。



『でも! あたし!』



……あ、そうだ、俺。

聞こうとしなかったんだ。



はじめから信じようとしなかった。


自分ばっかり苦しいと思いこんで。




『魁運に憑りついてる幽霊って、もしかして――』



あのとき、ひとみの声は、少し震えていた。



どんな思いだったんだろう。

どうしてわかってやれなかったんだろう。



俺だって、ふつうじゃないのに。


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