死んでもあなたに愛されたい
「前髪」
「え?」
「上げたんだな」
「うん。どうかな?」
「いんじゃね? 似合ってる」
よし。これから毎日この髪型でいこう。決まり。
他人の恐怖をあおらないように隠していた目を、魁運のたったひと言で、さらけ出したいと思った。
他人よりも、魁運が大事で。
彼の評価が、あたしのすべてだ。
身支度を整え終えたあたしたちは、居間で食卓を囲む。
おじ様が愛情たっぷりこめて作ってくれた和食だ。
昼食用のお弁当も用意してくれていた。
「今日から学校か。ひとみちゃんにとっては初めての登校だね」
「はい。不安もありますが、楽しみです」
「学校への行き方はわかる?」
「なんとなく地図は把握しているんですが……」
「それなら魁運、一緒に学校に行ってやるといい。初めてだとわからないことも多いだろうからな」
学ランに身を包む魁運に、あたしからも頼むと、黙ってこくりとうなずいてくれた。
一緒に登校……夢みたい。
こういうのを青春って呼ぶのかな。
「帰ってきたら、また神社のお手伝いしますね!」
「ありがとう、ひとみちゃん。助かるよ」
「いえ! おふたりのやさしさに助かっているのはあたしのほうです。手がいるときはなんでも言ってくださいね!」
恩返しをしていきたい。
やさしい居場所を守りたい。
そのためにできることは、ぜんぶやってのける。
ここにお世話になると決まったときから、あたしの“一番”は揺るがない。