死んでもあなたに愛されたい
「見たくないものは、見なければいい。見せたくないものは、遠ざければいい。さすれば、少しは生きやすくなるだろう?」
「生きやすい……?」
「ああ。昔、言ってただろ。妹のそばが一番心地よい、と。だから……その、なんだ、」
父さんの考えって。気持ちって。
……いざ教えられると、拍子抜けしちゃう。
なんて短絡的で、イカれた守り方。
わざわざ家の一番奥の大部屋を、あたしの部屋にして。
少しでも清んだ空間に隔離したところに、ぬいぐるみ代わりにつぅちゃんを寄越そうとしてたの?
大馬鹿者はどっちだ。まったく……。
父さんも十分、ふつうじゃないよ。
「組長は人知れず、お嬢を想っていらしたんですよ。ヒトならざる者や異能のことを理解し、お嬢の苦しみをわかち合えるように、と。本棚にもたくさん参考書が並んでいますし」
「本棚……??」
ヒトならざる者とか異能とかの参考書ぉ?
そういうファンタジーやオカルトチックの本といえば……。
『超能力はきみの中に!』
『ファンタジーガイドブック』
『異能を覚醒する方法』
ああああ!!
父さんの書斎に、隠すように置いてあったアレか!?
「ええっ!? アレは厨二病じゃ!?」
「ちがう!! 兵吾郎、よけいなことまで言うな!」
「この際、すべて言わないともったいないですよ! 俺や純也を目付け役にしたのも、まだあまり現場に出てなくて、カタギに近い存在だったからですし」
「な、なんとなくだ!」
あたしの目付け役の条件。
無知で、無垢であること。
赤羽くんと目が合った。
ほら言ったでしょう、と言わんばかりに目をすがめている。
……うん。本当に単純だったね。