死んでもあなたに愛されたい



「見たくないものは、見なければいい。見せたくないものは、遠ざければいい。さすれば、少しは生きやすくなるだろう?」


「生きやすい……?」


「ああ。昔、言ってただろ。妹のそばが一番心地よい、と。だから……その、なんだ、」




父さんの考えって。気持ちって。

……いざ教えられると、拍子抜けしちゃう。


なんて短絡的で、イカれた守り方。



わざわざ家の一番奥の大部屋を、あたしの部屋にして。

少しでも清んだ空間に隔離したところに、ぬいぐるみ代わりにつぅちゃんを寄越そうとしてたの?



大馬鹿者はどっちだ。まったく……。

父さんも十分、ふつうじゃないよ。




「組長は人知れず、お嬢を想っていらしたんですよ。ヒトならざる者や異能のことを理解し、お嬢の苦しみをわかち合えるように、と。本棚にもたくさん参考書が並んでいますし」


「本棚……??」




ヒトならざる者とか異能とかの参考書ぉ?

そういうファンタジーやオカルトチックの本といえば……。



『超能力はきみの中に!』
『ファンタジーガイドブック』
『異能を覚醒する方法』



ああああ!!

父さんの書斎に、隠すように置いてあったアレか!?




「ええっ!? アレは厨二病じゃ!?」


「ちがう!! 兵吾郎、よけいなことまで言うな!」


「この際、すべて言わないともったいないですよ! 俺や純也を目付け役にしたのも、まだあまり現場に出てなくて、カタギに近い存在だったからですし」


「な、なんとなくだ!」




あたしの目付け役の条件。

無知で、無垢であること。



赤羽くんと目が合った。

ほら言ったでしょう、と言わんばかりに目をすがめている。


……うん。本当に単純だったね。


< 208 / 329 >

この作品をシェア

pagetop