死んでもあなたに愛されたい
「今の時代は自立だ、自立」
「なんて調子のいい……」
「ひとみ、おまえも調子がよさそうじゃないか」
「まあね」
それは嫌味でしょうか。
長く反抗期をやってきたせい?
父さんに負けず劣らず、あたしもなかなかにひねくれてるみたい。
「く、組長、なぜここに……」
「わざわざ見送りにきたの?」
息を吹き返した兵吾郎から、父さんは手を離し、ポケットから何かを取り出した。
その何かをこちらに投げてきた。
「わあっ! ちょっと! 急に投げないでよ!」
「持っていけ」
「何を……って、え、これ」
「餞別だ。どこかの誰かが壊したと聞いたからな」
受け取ったのは、新しい携帯。
しかも、最新型のホワイト。
昨日発売したばっかじゃなかったっけ。
ふつうのオノを落としたら、銀のオノをもらってしまった気分。
「い、いいの……?」
「それがなければ困るだろう」
「……また細工とかしてない、よね?」
「現在地くらいはがまんしろ」
細工してるんかい。
ま、それくらいなら許してやるか。
盗聴や盗撮されてるんじゃないし。なんたって今日のあたしはやさしさの塊だし!