死んでもあなたに愛されたい
――バタン……。
静かに扉が閉ざされた。
広い玄関に、大のオトナがふたり。
朝にそぐわない、しんみりとした寂しさが漂う。
「……組長がお許しになるなんて思いませんでした」
開口一番。
兵吾郎はすねたような、疑っているような視線を、隣にじっと送りつける。
「あれが最適ではなかったと、気づいただけだ」
「……いいんですか、組長。おそらく、彼は――」
「よくはない」
ばっさりと父さんは言いきった。
だが、と。
歯切れわるくつぶやき、瞼をそっと伏せる。
その瞼の裏に浮かぶのは、ここにはいない娘の面影。
「ひとみにはまだ、明かしていないようだったからな」
「では、今後も監視は……」
「いや、あいつも、もう見極め終えたころだろう。あの坊主とのことは、あいつに一任してある。明かすべきときに明かすだろうさ」
「そう、ですか」
「わたしもまだ信じたわけではない。またひとみが傷つくようなら……二度はない。これまでどおり様子を見ておけ」
「御意!」
おぞましく、怪しい、日本家屋。
隠しごとに満ちた、黒い気配。
そこには、まだ、あたしの知らない“秘密”がある。