死んでもあなたに愛されたい
公共の道のど真ん中で、してやったりな顔をして。
なにげなく、日常の延長線みたいにリップ音を鳴らしちゃって。
たったの一瞬だったのに、ずるいなあ。
あたしの全神経かっさらっていくんだもん。
「不意打ち……っ」
「さっき、してほしそうな顔してたから」
「うっ……」
バレてましたか。
ザッツライト。キスしたかったです。
でも……1回したら、もっとしたくなっちゃうじゃん。
短いのじゃなくて、もっと、もっと……。
「ちょっとちょっと、そこのバカップル!」
「はひ!? あ、あたしたち!?」
「そうよ、ふたりのことよ。ここが学校前だってわかってる?」
褪せたピンク色が、視界の隅を横切る。
と同時に、ズンッ、と肩が重くなった。
「不純異性交遊はんたーい」
「ま、マユちゃん先輩!」
あたしの肩に腕を乗せるマユちゃん先輩に、魁運は冷たく当たる。
「繭、腕どけろ」
「わあ、ひっどーい。心せっっま」
「言ってろ」
「ひとみんだけ特別扱い~?」
「あたりめぇだろ」
軽率に、キュン。
魁運、デレ期に入ったの?
今日は糖度高めで心臓が持たん。
心せまくて、嫉妬深くて、カノジョにだけ特別やさしいカレシ……。
実にあたし向けですね!
あたしにしか向きませんね!?
そうです、あたしだけの魁運なんです!!
「ひとみんはこんなヤツがカレシで……」
「いいんです!!!」
「……そのようね」
マユちゃん先輩に若干、引かれてるような……?
まあいっか! あたしたちがよければそれでよし!