死んでもあなたに愛されたい



「……あいつらのイチャイチャなんか見たくねぇよ」

「胸クソわりぃ……」

「けど、やっぱ、美人だよなあ」

「あの目がなきゃ、ね」

「目が合ったときの絶望感やばいよ」

「あー、そういや委員長も顔面蒼白になって……って、お、おい!」

「ちょ、影野!?」



あれ、クラスメイトがどよめいてる?


なんだなんだ……と思ったら、影野さんがこっちに来てる!?



なぜ? 非リアにはきつかった!? イチャイチャ禁止!?




「あ、ああ、あ、あの、しゃとうしゃんっ!!」


「…………ハイ」




噛んだ。

嚙み倒した。


ここにいる全員がそう思った。




「さ! 佐藤さん!」




あ、言い直した。




「た、たいちょ、は……」


「え? 太陽?」


「体調! は! ど、どう……で、すか……?」


「ああ、体調ね」




愛想よく一笑すれば、影野さんはびくりと尻込みする。


メガネの奥が潤んでる。メガネまでずれてる。



あー、そうだった。
目を見て話す礼儀が、ここでは礼儀じゃないんだったね。

ちょいと視線そらしてあげるか。


怖いのはやだもんね?




「完治したよ。今日からまた元気よく学校生活!」


「そう、ですか……。よかったです……」


「そういえば、魁運から聞いたよ。あたしを見たって、教えてくれたんだってね」


「そっ、それは、その……えっと……」




影野さんはちらりと魁運を一瞥すると、いっそう血の気が引き、すぐにあたしのほうに視線を戻した。


ずっと彼女の視線を感じる。


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