死んでもあなたに愛されたい




「それは、昔。そう遠くはない、昔の話――」




――白鳥家の遠い分家に、ひとりの少女が産まれた。



魂を乗せて告げる力と、死人とつながる力。

それらを併せ持った巫女の能力が、小さな小さな赤子の身体に宿っていた。



巫女の血を継ぐ者は、身体の一部の色が抜け落ちる。


たとえば、瞳が透けていたり。
たとえば、舌の先だけ白かったり。


その少女もまた、ことさら肌が白かった。



新たな巫女の誕生に、白鳥家は大喜びした。


産まれたばかりなのもおかまいなしに、本家はすぐさま少女を引き取り、それはそれは大切に育てられた。




「本家の人間はね、巫女に執着しすぎてるの」




巫女の力は、親から子へ引き継がれるものじゃない。


白鳥の血が絶えぬ限り、永続的に、突発的に、新たな巫女が生まれ続ける。


ただ、巫女の血が強かったり、本家の血筋だったりのほうが、巫女が生まれる確率が高いだけ。

実際、あたしたちの母親も本家の人間だ。




「それにすがって、できるだけ巫女を本家に招き入れようとする。だから本家の人間の半数以上が、身体の一部の色がないの。笑っちゃうよね」


「え? そんなに巫女の先代いるの? あれ? 巫女って先代がいなくなると、次世代が誕生するんだよね?」


「ひぃちゃん知らなかったっけ? 身体の色がなくなるのは、巫女本人だけじゃないんだよ。巫女の母体からじかに産まれた実子も、性別、能力の有無問わず、強制的に色が抜け落ちてしまうの。

――ことさら肌の白かった巫女の、お目付け役だった男性も、母親が巫女だったらしいよ」



< 237 / 329 >

この作品をシェア

pagetop