死んでもあなたに愛されたい
哀愁
赤いハチマキを巻きつけて。
くるりと蝶々結びをしたら。
「はい! かんせーい!」
あたしのではありません。
いとしのダーリン、魁運に結んであげたのです!
「サンキュ。自分じゃうまくできなかったから助かった」
「そんな不器用なとこも好き!」
「ははっ、知ってる」
「きゃ! 知られてた! でへへぇ~」
体をくねくねさせれば、魁運によしよしされちゃってもう大変。
口角が上がりすぎて、目尻あたりまでいっちゃう日も近いかも。
体育祭開始まで残り数分の緊張感。
彼氏と過ごすはじめてのイベント。
これだけでテンションが高くなってるっていうのに。
だっさい体操服をかっこよく着こなしてる魁運を前にしたら、自然と口角が突き上がるにきまっとろうが!
「俺も結んでやるよ」
「いいの!?」
口角の最高打点に達して、目がつぶれる……!
頬肉がんばれ! 表情筋を保て!
「結局ハーフアップにしたんだな」
「あ、う、うん! そう! 軽くまとめてみた」
「器用だな」
「似合う? 似合ってる?」
「いつものより大人っぽくて似合ってる」
じ、じゃあ、今度からたまにハーフアップにしてみようかなあ。
相変わらず、我ながらちょろい。
だって魁運、ほめ上手なんだもん。ぜんぶ真に受けちゃうよ。