死んでもあなたに愛されたい



ブチリ。


離れないように足に結んでいた、リボンが、切れた。



まっぷたつに、引き裂かれた。




「く……っ」


「……チッ、外したか」




ダラリ……と、魁運の左足首から鮮血がたれる。


白い靴下が赤く染まっていく。



くそ! あいつめ……!


あたしの足を撃って、逃げられなくしようとしたのか。

そこを魁運が助けてくれた。



でも……魁運が血を流すのも、見たくないんだよ。




「かい……魁運……!」


「……っ、」




弾丸のかすった足首をおさえ、魁運はつらそうに浅く呼吸する。


出血は多くはない。

けど痛くない、わけがない。




「魁運、つらいなら……」


「……っ、は、」


「……かい、うん?」




魁運と、目が、合わない。



どうして?

足首を痛がってる?


……本当に?



100メートル走では涼しい顔をしていたのに、今は、ひどく汗をかいていて。


血の気の引いた顔色とは相反して、その目の奥は爛々と燃えている。



その、ワケは、もしかして。



『今わたしを狙ってる連中が元凶の仲間と知ったうえで、いつか対峙してしまったときには、きっともう……』



新調されたピアスが、不安定にぐらつく。

不安になったのをごまかしたくて、彼の腕にしがみついた。




「……ひ、とみ、」




ようやく合わさった眼差しは、大丈夫だよ、と伝えてくれる。


うそでもいいよ。

大丈夫でも、大丈夫じゃなくても、そばにいる。



あたしたちは、ぜったいに、引き裂けない。




「い、今、う、撃って……?」

「血……あれ、血じゃ……!?」

「あの、死神が……ッ」

「殺さないで……お願い……やめて……」



「次、騒いだら、てめぇらもこうなっからな」




ゆっくりと銃口が客席をなぞっていく。


一般人は息をのんだ。

悲鳴がもれかけ、すぐに上と下の唇をつぐむ。


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