死んでもあなたに愛されたい
「あぁ、それとも」
不意に、ピストルが止まった。
敵が狙うのは。
中央から外れているものの、遠くへ逃げそびれた、二人三脚のペアたち。
つながれた醜い足を見つけ、男は不敵に嗤う。
「さっさと殺っちまったほうが早ぇか?」
「ひ、ひぃ……っ」
「や……いや……ッ、イヤ……!」
「――やめなさいっ!!」
広々と陣取られた、観客席の先頭。
穢れのないワンピースがひるがえる。
誰よりも美しく、何よりも華やかで。
それでいて激しく、勇ましく。
哀しみ、憤り、だからこそ立ち上がる。
あの少女――白鳥つむぎが、そういう人間だと、わかりきっていた。
「おうおう、巫女の嬢ちゃん。来てくれる気になったか」
「……銃を下ろして」
「さっさとそうすりゃ、」
「無関係の人たちを巻きこまないで」
男がため息まじりに両手を上げると、つぅちゃんは二人三脚のペアのリボンをほどいてあげた。
逃げるよううながせば、ハイトーンの髪色が目に留まる。
マユちゃん先輩が保護してくれたなら安心だ。
これで、今度こそ、関係者と無関係の人たちできれいに分けられた。
「さあ嬢ちゃん、こっち来いよ」
「……っ」
「おっと、言霊は使うなよ?」
再び、銃が向けられる。
つぅちゃんを指したままゆずらない。
誰かがすすり泣く声が、聴こえた。
「つ、つむぎ様……いけません!」
赤羽くんのふりしぼった制止が、遺憾にも、妹の背中を押した。