死んでもあなたに愛されたい
緊迫感が張り詰める。
太陽が雲に隠れていく。
くるんくるんにクセのついた明るい茶色の髪を、今日は、今日だけは、愛らしく感じられない。
「フンッ、最初からこうしときゃよかったぜ」
「…………」
あたしたちと敵のちょうど境目で、つぅちゃんは立ち止まった。
その背中は震えてはいない。
男は近寄り、クイ、とぶしつけにつぅちゃんのあごを持ち上げる。
「こうして見るとなかなかだな」
汚らしい息づかい。
前科を感じさせる、ねっとりとした視線。
成人してもガキな思考。
ああ、わかる、……わかるよ。
苦しくてたまらない。
堕ちるとこまで堕ちてってほしいね。
「嬢ちゃんのことは俺がかわいがってや……」
「もう、ヤメーーっ!?」
「だめだよ、つぅちゃん」
わかってる。
ぜんぶ、わかっているよ。
あたしたちは、魂を分けた姉妹だから。
わかってしまうんだ。
また、妹が、犠牲になろうと覚悟してること。
その口をふさいで止めるのは、お姉ちゃんの役目。
「こんなヤツらのために、命を削ったらだめ!」
「ひ、ぃ、ちゃん……っ」
つぅちゃんの口元を手で覆いながら、つぅちゃんがうしろ側になるよう、ぐるりと回転。
その勢いに乗って、気色わるい男を蹴り上げた。
「グホッ……! くっそアマがぁぁああ!!」
「あ……危ねぇひとみっ!!」