死んでもあなたに愛されたい



光るナニカが、迫り来る。


反射的に首をかしげ、無理やりつぅちゃんを屈ませた。




――ジャキッ……!


――……カシャン。




「……ひ、とみ……」

「ひぃちゃ……か、髪が……!」




ひとふさ、ふたふさ。

渇いた土の上に、はらはら落ちていく。


半分切られたグレーの毛束と、それから。



切れ味のいい、銀のナイフ。




……そう、だよね。

所持してる武器はひとつとは限らない。


蹴られて倒れかけながらも、気合いで投げてきたんだ。


急所にはほど遠かったけれど……まあいいさ、髪の毛くらいくれてやる。




「あたしさー、耐えられないんだよね」


「あ?」


「殺られるとわかってて、敵の言うこときいてじっとしてるなんて」




やっぱり、あたしは、ヤクザの娘だから。



やられたらやり返すのが性に合う。

堕とすなら、自分の手で。




「アハハッ! てめぇバカかよ!」




男が片手を上げると、中央に集まった仲間が武器をかまえた。

一般人のほうへ。


そうなるよね。知ってた。




「てめぇの勝手でこいつらがどうなるか……」


「時間かせぎにはなったんじゃない?」


「……はっ?」


「だからね? こっちはバカじゃないんだってば」




無関係の人たちが何もされない自信はあった。


なにせ、こちら側にあちらさんの獲物がいるのだ。

よくもわるくも言霊を恐れているからこそ、最悪人質にされても、殺しはしないだろう。


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