死んでもあなたに愛されたい



まずは、毒針。

といっても……さっきの言葉、聞いてなかったのかな?


何ひとつ届かせないって言ったよね?




「残念でした」




かすりもせずに、針は風圧に叩き落とされる。


幽霊さんたちのおかげだ。
ありがとー。いつも助かってるよ。


先端恐怖症の子もいるかもしれないから、この毒針はぎったんぎったんに踏みつぶしてあげようね?




「そこどけぇぇ暴力女ぁぁ!!」


「あたしのこと?」




前かがみ気味に走ってくる、失礼な男。

吐き気がする。
マイナス4千億ポイント。




「失格。出直してきな」


「……ッ、フ」




足を引っかけようとしたら、男は瞬時に身を反らし。

服の下にひそめていたカッターを、振りかぶった。



「ひぃちゃん……!!」

「さ、佐藤さん!」



「あわてない、あわてない」




つぅちゃんも影野さんも、あわてなさんな。

あたしを誰だと思ってるの。




「ヤクザの娘をなめないでよ」


「え!? 佐藤さんが……や、ヤクザ!?」


「……あ、そっか。影野さんたち知らなかったんだっけ。もう隠しても意味なさそうだから暴露しちゃうけど、あたしの本名、白雪ひとみっていうの。これからは本名で呼んで」


「さと……し、白雪、さん?」




カッターを避けつつ改めて自己紹介。

……って、これ、なんだかへんてこな状況だ。


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