死んでもあなたに愛されたい
男の憎たらしい笑みが、やや引きつっていく。
ギンと光る異質な瞳に、男の焦燥の色までも映っていそうで。
あたしのほうがいたずらに笑ってしまった。
もしかして、怖がってる?
今さら?
逃がしてなんかやんないよ。
すぐそこに地獄が待ってる。
「お、オメー、なんかに……っ」
「あたしの目、見たくないなら、見られないようにしよっか」
「なっ、に……ィギヤァ!?」
乾燥した土砂を、男の顔にかけてあげた。
異物が入り、充血した目を、男は固く閉ざす。
これで怖くなくなった? そうでもない?
真っ黒な世界はお好みじゃない?
ま、なんでもいいけど。
「痛っ、目、が……っ。ど、どこだ! どこにいやがる! 出てこい!」
「もう出てるんだけど。しかも目の前」
「目の前!?」
目を閉じたまま振り回されたカッターは、避けるまでもない。
するりと赤いハチマキを取り、ちょこまかと動く腕に巻きつけた。
「腕が……! な、なにをした!?」
「目を開けて確認してみれば?」
「そ、それができねぇから聞いてんだろうが!」
「それはお気の毒様」
「何もかもオメーのせいで……っ!!」
「その責任転嫁するクセ、やめたほうがいいよ」
そう言い返しながら、腕を男の背に持っていく。
もう片方の腕と一緒にハチマキで縛り上げて、がっちり固定。
カッターは取り上げて……どうしようかな。
学校に寄付する? それともぶっ壊す?
んー……こいつの所持品を生徒に使わせたくないな。後者で決定。