死んでもあなたに愛されたい
モテるコワモテ
「もう、お守りがなくても大丈夫そうだな」
家を出る間際、親父はさみしげに破顔した。
休み明けの月曜日。
結局中止となった体育祭で、いろんなことがあった。
本当に、いろんなこと。
親父にすべて話すことができたのは、自分の中でようやっと整理のついた、昨晩のこと。
「まだ、全然慣れねぇけど」
「いいんだよ、慣れなくても」
飾り気のなくなった耳。
心も体も、どこもかしこも、軽くなった。
生まれ変わったみたいに。
今、ここにはいない、彼女のおかげで。
「本家のほうからもお礼とお詫びの連絡があったよ」
「ひとみの妹から?」
「巫女様からは、また後日会いに行く、と」
「ひとみにだろ?」
「ああ、きっとな。えらい手ごわいライバルだが、負けるなよ魁運」
茶化すように言ってくる親父に、俺は肩をすくめて靴を履く。
「いってきます」
足取りまで、軽く感じた。
あぁ、これは、気持ちのせいだ。
早く会いたがってるんだ。
ひとみに会いたくて、勝手に足が急いて動いていく。
俺って、こんなだったろうか。
歩くたび胸の上ではずむ、スイレンのつぼみを、すべて赤らめてしまいそうだ。