死んでもあなたに愛されたい
この土日、ひとみは一旦、白雪組の家に帰った。
妹と、兵吾郎と呼ばれるあの若い男に、一生のお願いだとすがりつかれたからだ。
体育祭の一件を処理するのが目的だろうと、ひとみは言っていたけれど、それだけではないことは一目瞭然だった。
妹と若い男がわかりやすいんだ。
魂胆がバレバレ。
大事な姉を、お嬢を、少しでもそばにおいておきたいんだろ。
俺も同じだから、よくわかったよ。
しょうがないから土日はゆずってやったが、今日からはまた運命共同体。
校門前で会う約束をしてる。
ひさしぶりにひとりで通学する時間なんか、秒で過ぎてしまえ。
「あっ! 魁運!」
ドクンッ、と心臓が息をした。
北校へ伸びる道の途中で、思わず立ち止まる。
校門の脇に立つ、華奢な背。
あご先で整えられた、短い髪。
きらきら彩りを変える、きれいな双眼。
そこにははっきりと、俺だけが捕らえられ、融けこんでる。
好きだと、想った。
それだけでは足りないとも。
想って、すぐ、駆け寄った。
「ひとみ……会いたかった」
「あたしも。おはようって早く言いたかったよ」
土日、たったの2日。
正確にいえば、1日半。
なのにこんなに恋しがるのは、異常なのかも。
それでいいか。
ふつうじゃなくていい。
ひとみとなら、なんでも。