死んでもあなたに愛されたい
何も言わずともぎゅっと手を握って、すき間を埋めていく。
キスもハグもしたいけど、我慢。
あとで、ふたりきりのときにとっておく。
「体育祭、来週末まで延びちゃったね」
「この前やれなくて残念だったな」
「二人三脚したかったなあ。魁運の棒倒しも見たかった! あ、そうそう、つぅちゃんも一緒にお弁当食べられなくて悲しがってたよ」
「来週末も来るとか言わねぇよな?」
「行きたいとは言って…………ん? んん!?」
「ん?」
下駄箱前で、突然、ひとみがキョロキョロし始めた。
なんだ、なにごとだ。また敵襲か?
「ね、ねぇ魁運! みんな見てる!」
「え? あー、うん、そうだな?」
いつものことじゃないか?
登校時間のかぶったヤツも、校舎にいるヤツも。
先生生徒問わず、ちらちら、こちらに視線をよこしてる。
取り立てておどろくことじゃない。
今さら何を、と笑えば、ひとみは「ちがう!」と首を振った。
「そうだけど、そうじゃなくて! 視線がいつもとちがうんだよ!」
「え?」
「なんか妙に熱っぽいっていうか、尊敬と恋の間っていうか! かっこいい~、すてき~、って声も聞こえちゃった!」
「う、うん?」
「みんな節穴だったのに、体育祭で魁運の勇姿に惚れちゃったんだよ! ぜったいそう! ちゃっかりマユちゃん先輩の株も上がってるし」
「えっと……?」
「魁運を崇めたたえてくれるのは万々歳だけど、素直によろこべない! どうしよう、恋敵が殺到したら……。うぅ……こんなことならひっそり片付ければよかったかな?」