死んでもあなたに愛されたい
たしかに視線の意味は変わった。
悪意は飛ばされないし、俺がいても空気が壊れない。
でもだからって、そんな心配しなくても。
むしろ……。
「ほんとかっこいい! すてきだよね、佐藤さん!」
「佐藤じゃなくて、白雪だろ。そこ大事。あの白雪組の娘なんだよな? だからあんな強かったのか」
「少し怖ぇけど……でも、惚れるしかないよな。あんときの背中、まじでかかった。かっこよすぎ」
「白雪さんの目も、今思えば、きれい。まぶしい。どうして今まで恐れてたんだろう。過去の自分、どうかしてる」
「『あたしがそう思ってないんだから、それがすべてでしょ』……あの言葉に、ちょっと泣いちゃった」
「わかるよ委員長! 『もう逃げなくていいよ、すぐ終わるから』って言ったときの横顔もやばかったよね!」
「わたし、白雪さんなら抱かれてもいい……」
むしろ、俺のほうが、心配だよ。
熱っぽい視線。黄色い声。
そのどれもが、俺ではなく、ひとみに集まってる。
ファンクラブまでできたってうわさも聞いた。
頭を抱えてうなってるひとみは、これっぽっちも自覚してないんだろうな。
俺よりひとみのほうがモテてること。
俺がこっそり嫉妬してることも。
あとでたっぷり愛して、教えてやんねぇとな。
だから、今は。
「ひとみ」
「っ、へ? な、なに、魁運?」
「俺のこと、好き?」
ひとみの言葉で、教えて。
好きなように牽制して、欲しがってくれよ。
俺は死んでもずっと、ひとみのもんだって。
「好きより、もっと――愛してる」
<END>