死んでもあなたに愛されたい



たしかに視線の意味は変わった。

悪意は飛ばされないし、俺がいても空気が壊れない。


でもだからって、そんな心配しなくても。



むしろ……。




「ほんとかっこいい! すてきだよね、佐藤さん!」

「佐藤じゃなくて、白雪だろ。そこ大事。あの白雪組の娘なんだよな? だからあんな強かったのか」

「少し怖ぇけど……でも、惚れるしかないよな。あんときの背中、まじでかかった。かっこよすぎ」

「白雪さんの目も、今思えば、きれい。まぶしい。どうして今まで恐れてたんだろう。過去の自分、どうかしてる」

「『あたしがそう思ってないんだから、それがすべてでしょ』……あの言葉に、ちょっと泣いちゃった」

「わかるよ委員長! 『もう逃げなくていいよ、すぐ終わるから』って言ったときの横顔もやばかったよね!」

「わたし、白雪さんなら抱かれてもいい……」




むしろ、俺のほうが、心配だよ。



熱っぽい視線。黄色い声。

そのどれもが、俺ではなく、ひとみに集まってる。


ファンクラブまでできたってうわさも聞いた。



頭を抱えてうなってるひとみは、これっぽっちも自覚してないんだろうな。


俺よりひとみのほうがモテてること。

俺がこっそり嫉妬してることも。



あとでたっぷり愛して、教えてやんねぇとな。



だから、今は。




「ひとみ」


「っ、へ? な、なに、魁運?」


「俺のこと、好き?」




ひとみの言葉で、教えて。

好きなように牽制して、欲しがってくれよ。



俺は死んでもずっと、ひとみのもんだって。





「好きより、もっと――愛してる」






<END>


< 295 / 329 >

この作品をシェア

pagetop