死んでもあなたに愛されたい
「あのう……」
「はい?」
おそるおそる声をかけてきた女の子。
思わず目を合わせると、びくつかれた。
あ、そうだった。あたしの目は特殊なんだった。
永鳥家のおかげですっかり感覚が麻痺しちゃってたよ。
ななめ下に視線を落としたら、ようやっと女の子が口を開いた。
「……さ、佐藤……ひとみさん、ですか?」
「そうです、あたしが佐藤ひとみです」
「た、体調は、もう大丈夫なんですか……?」
「体調?」
なんのこと?
首をかしげかけて、はたと思い出す。
そういえば父さんが言ってたっけ。
表向きには、身体が弱い設定にしてあるって。
生まれてこのかた、めったに体調不良になったことないんだけどなあ……。
「佐藤さん?」
「あっ、えっと、体調ですよね! はい、完っ全に治りました! 問題なしです!」
「2学期からはふつうに通えるんですね。よかったです」
会ったこともないクラスメイトをずっと心配してくれてたのかな。
うれしい反面、罪悪感で胸が痛い。
あのうそつきジジイめ……!
「わたし、1の4の学級委員をしています。影野といいます」
メガネの似合う、かわいらしい女の子だ。
まっとうに生きてきたんだろうな。
苗字とは不釣り合いのピュアさがにじみ出ている。