死んでもあなたに愛されたい



――カサカサ。



冷たい風が吹いた。

わずかに草がおどり、俺の焼けた肌を舐める。


涼しい……いや、なんか、もう、ちょっと寒い、かも?




「あああっ!!」


「っ!?」




振り向けば、草をへだて、女の子が俺を指さしていた。


やべ。見つかっちまった。
意外と早かったな。


てか、なんでこの子、怒ってんの?

ここはよろこぶとこじゃね?




「もう! おしえちゃだめって言ったのにー!」


「え? お、教えてねぇよ!?」


「あたしひとりで見つけられたもん」


「だ、だから」


「もういっかい! お兄さん、またかくれて!」


「えー……」




話を聞け。


草を揺らしたの、俺だと思ってる?

ちげーちげー!
風だ! 自然のしわざだ! 故意じゃねえ!




「お兄さんお〜ね〜が〜い〜〜!」


「…………あと一回だけな」


「わーい!! やったー!!」




別に、お願いに負けたからじゃねぇ。

女の子ひとりじゃかわいそうだと思ってだな。

しょうがねぇから付き合ってやるだけ。そうだ、子守りみてぇなもんだ。



俺も、まだ、帰りたくなかったし。

都合がいいんだ。お互いに。


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