死んでもあなたに愛されたい
一緒に帰れるチャンスが、逃げた。
いや、元よりチャンスじゃなかった。
あたしがもうちょい押せば……。
どっちにしろ何か用事があったみたいだから無理か。
次のチャンスこそ狙いを定めて、モヤモヤを取っ払わなくっちゃ!
そのためには、うーん……。
「ちがうのぉ~!」
「何がちがうんだよ。浮気したのはてめぇだろ」
「あ、あたし、う、浮気なんて……」
「証拠はあがってんだ。さっさと離れろ」
大通りに戻り、歩いている途中。
繁華街近くのコンビニ前。
何やら修羅場が勃発中。
ガタイのいい浅黒い男に、豊満な肉体をくっつける女。
あ、あたしも、ああやって色仕掛けを……。
自分の体型を確認して秒であきらめた。
「ちが……そ、そう、死神。死神よ!」
「は? 死神?」
「そう、死神のヤツに脅されて、無理やり……!」
「……うそじゃねぇだろうな」
「ほ、本当よぉ! あ、あたしだっていやだったけど、怖くて……っ」
修羅場のほうは丸く収まりそう。
よくわからん単語が聞こえた気もするが、誤解がとけてよかったですね。どうでもいいですが。
えんえん泣き出す女に、男はなぐさめのキスをひとつ、ふたつ。
あたしたち通行人のことは視界にないご様子。
だから。
――ドンッ!
こんな目に遭うんだ。
浅黒い男の肩が、あたしにぶつかった。
もっと周り見とけよ。
キスしてる場合じゃねぇぞこら。