死んでもあなたに愛されたい


本当に遊んでほしい人には逃げられちゃったから。

あたし、今、虫のいどころがわるいんだよね。


あたしにも愉しませてよ。




「おら、イイコトして遊――」




残暑を蹴散らすほどの冷気が、頬を刺す。


ゆらりと瞳を持ち上げ、男にピントを合わせる。

殺気をほのめかせ、赤い口をゆるませた。


とたんに男は青ざめる。




「ひぃ……っ。な、なんだよ、この女……!」




鳥肌の立つ男の腕が、あたしの肩からどかされた。

無言で威圧し続けると、男は震えあがる。


怖いもの、知っちゃった?




「や、やべぇ……」

「ちょっとぉ、どうしたのぉ~?」

「か、帰んぞ!」

「この子と遊ぶんじゃないのぉ?」

「やめだ、やめ! そいつはほっとけ!」

「えぇ~?」




あーあ、行っちゃった。

見た目のわりに腰抜けだったな。



男に触れられたところを手で払い、何ごともなかったようにコンビニ前を通り過ぎた。


その後の道のりはとても静かだった。


< 41 / 329 >

この作品をシェア

pagetop