死んでもあなたに愛されたい
本当に遊んでほしい人には逃げられちゃったから。
あたし、今、虫のいどころがわるいんだよね。
あたしにも愉しませてよ。
「おら、イイコトして遊――」
残暑を蹴散らすほどの冷気が、頬を刺す。
ゆらりと瞳を持ち上げ、男にピントを合わせる。
殺気をほのめかせ、赤い口をゆるませた。
とたんに男は青ざめる。
「ひぃ……っ。な、なんだよ、この女……!」
鳥肌の立つ男の腕が、あたしの肩からどかされた。
無言で威圧し続けると、男は震えあがる。
怖いもの、知っちゃった?
「や、やべぇ……」
「ちょっとぉ、どうしたのぉ~?」
「か、帰んぞ!」
「この子と遊ぶんじゃないのぉ?」
「やめだ、やめ! そいつはほっとけ!」
「えぇ~?」
あーあ、行っちゃった。
見た目のわりに腰抜けだったな。
男に触れられたところを手で払い、何ごともなかったようにコンビニ前を通り過ぎた。
その後の道のりはとても静かだった。