死んでもあなたに愛されたい
はあ……美しい。かっこよい。
しびれるような殺気も。
据わった目つきも。
傷と血のついた拳も。
ぜんぶがナンバーワンで、オンリーワン。
魁運の知らない顔と出会うたび、心臓がトクンと甘く高鳴る。
もっと酔いしれていたい。
「カイ~」
「……っ」
「グアァッ!?」
「ありゃだめね。聞こえてないわ」
やれやれと困った様子で、マユちゃん先輩は路地全体を見渡す。
地面に伸びている巨漢が、10人。
すみっこで腰を抜かす女が、1人。
今相手している浅黒い男が、ラストのようだ。
「ずいぶん暴れたようね」
――ドスッ!!
「……それは今もね。カイったら」
あ。前歯が飛んできた。
男の顔面に、魁運は拳をのめりこませる。
勢いをつけて男を壁まで飛ばすと、今度は奥歯が抜け落ちた。
「あ……あ、だ、ダーリン……起きてよぉ……っ」
涙目の女に、魁運はにらみを利かせる。
大股2歩で距離を詰めると、女はヒュッと息をのんだ。
「や、やめ……っ、」
「…………」
「ご、ごめ……ごめんなさ……っ、ぁ、謝るからぁ……」
魁運は腕を振り上げる。
拳が当たる。
その寸前で、女は気絶した。
魁運の腕が静かに下がっていく。