死んでもあなたに愛されたい



今の! 見た!? あたしは見ちゃったよ!!


か弱い子には手を出さないんですね!?

さすがやさしい男、日本代表(あたし基準)……!


惚れ直した。好き。




「……ゲホッ、ォウェ……ッ、は、」


「まだ殺んのか?」




血反吐を吐く浅黒い男に、魁運は余裕しゃくしゃくと見下ろす。


その威嚇もイイ……!

敵のほうはさっさと退場お願いします。出口はあちらです。




「逆ギレ、かよ……っ。だ、ダセーな」


「ふっかけてきたのはてめぇらだろ」


「さ、先に、俺の女を……取ったのは、っ、そっちじゃねぇか」


「は?」




虚言癖でもあるんですかー?
脳みそありますかー? 歯と一緒に落っことしましたー?


あの男の頭を、もう一発殴ったら正常になるんじゃない?

魁運! やっちゃってよ!




「ハハッ! ……ゴホッ……ハァ、そーだよなぁ」


「?」


「呪われたヤツは脅しでも使わねぇと、オンナと寝んのもできねぇよな」


「……あ?」




嘲笑う声が、鼓膜を腐らせる。


よく言うよね。
弱い犬ほどよく吠えるって。




「死神を好きになるヤツなんかいねぇっつってんだよ。かわいそーにな」




黒く、深く、あふれていく。

酸素がうすくなる。


きれいな金色が、濁り出す。


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