死んでもあなたに愛されたい
愛着
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俺は、その色に覚えがあった。
ひとみ特製の甘いオムライスを食べた、翌日。
朝霧の晴れない、早朝のこと。
親父と境内を清めていると、鳥居の前で、1台の車がブレーキをかけた。
このへんではあまり見かけない車種。
外装を塗りたくった、白と藍色。
その稀有な車は、まだ記憶に新しい。
いやな記憶だ。
車から2人の男が降りてきた。
和装姿の年配の男と、背広姿の若い男。
濃い藍色のスーツを着ているほうは、面識があった。
「失礼。こちらにわたしの娘が世話になっているはずだが、娘はどこにいる?」
鳥居の真ん中を堂々とくぐってきた年配の男は、確信を持って俺と親父に尋ねてきた。
鳥居の真ん中は、神様の通り道。
左右に寄って歩くのがマナーだ。
しかし、この男は、さも平然と真ん中を進んだ。若い男もそれに従った。
マナーを知らなかったのか?
……いや。
ニタリと意地わるげに笑う様に、わざとだと気づく。
親父も気づいていながら、愛想よく大人の対応をした。
「娘、といいますと?」
「とぼけるな。ひとみがお宅にじゃまになっているだろう」
「……ウチはこの通り、息子が一人でして。すみませんが、娘さんのことはちょっとわからないですね」