死んでもあなたに愛されたい
今、ひとみは、裏手の家で眠っている。
昨日はいろいろあったから疲れているんだろう。
もしもひとみが起きていたら、この場に鉢合わせていたかもな。
『……あたし、家出してきたんです』
『ずっとあの親の元にいたら、窒息しちゃうと思って』
……あぁ、よかった。
あいつがここにいなくて。
目の前にいるこの男が、本当にひとみの父親かも怪しいところだが。
本当だったとしても、やすやすとひとみを渡すわけにはいかねぇ。
家族にもいろいろある。
それは俺自身、身をもって知っている。
だがな!
鳥居の真ん中をくぐったときみたく、わるびれもせずに、自分の子どもを不登校にさせるし、軽い監禁状態におとしいれやがるようなヤツは、もれなくブラックリスト入りだ!
決死の覚悟で逃げてきたひとみを、俺は、傷つけたくねぇ。
「……白を切るつもりのようだな」
「組長、おそらく裏手の家にお嬢はおります」
男たちが何やらコソコソと話すと、あっさりと背を向けた。
あきらめたわけじゃないのはすぐわかる。
こいつら、家に行く気だ!
反射的に走り、男たちの前に回りこんだ。
俺を避けようとする彼らを、いちいち阻止してやった。