死んでもあなたに愛されたい
ある日、呪いの件をからかってきた大学生を、半殺しにしてやったら。
死神、なんてこっぱずかしい異名がついた。
本当にやめてほしい。
『ちょいと、死神さーん』
『やめてくれ! 呼ばれる身にもなってみろ! 恥ずいんだよ!』
異名がつきたてほやほやの、とある冬の日。
俺の羞恥心をくすぐってきたのは、繭だった。
絡んでくるヤツにしては珍しく、害意をまったく感じなかった。
警戒心むき出しな俺に、ウルフカットの彼はにっこりと笑った。
『はじめまして。死神さんのおうわさはかねがね聞いてますよ』
『……はあ』
『それ返事? ため息? まいっか。俺のことは知ってる?』
知ってるも何も、それなりに有名なヤツだ。
高橋繭。
実力でのし上がってきた暴走族――神亀の、6代目総長だ。
その美麗な容姿、人当たりのいい性格から、チームはもちろん、他グループや女子から圧倒的人気を博している。
……らしい。
『……あんたほどの人が、俺なんかに何の用すか』
『知ってるなら話は早いね。よかったらウチの幹部にならない?』
『は』
『その「は」は、「はい」の? それともため息の?』
『……意味わかんねぇの「は」っす』
『あはは、そっちかー』
ひさしぶりに親父以外と会話し、それが成り立っていることにちょっと感動したのを覚えている。
……我ながら、感動のレベルが低すぎるが。
『まあ、簡単に言うと、死神の名前を借りたいんだよね』
『名前を?』
『神亀って、今、勢いすごいじゃん? このまま波に乗ればトップに近づけると思うんだけど、ここに拍車をかけるにはどうしたらいいかな~って考えたとき、きみだ! ってぴんときたんだよ』
『……要は、俺を利用して、パワーアップしたと見せかけるってことか?』
『そゆこと!』
いっそ清々しかった。
せめて利用するのくだりは否定しろよ、と心の中でツッコミを入れた。