死んでもあなたに愛されたい
『死神さんにとってもわるい話じゃないと思うよ』
『どういう意味だ』
『神亀の幹部っていう肩書きがつけば、へたに絡まれなくなるし、死神さんに何かあったときは俺たち神亀が助けに行く』
『……ふーん』
『死神さんはただこっちに名前を貸してくれるだけでいい。いわば神亀の幽霊部員? みたいな?』
もちろん本当に仲間になってくれるなら万々歳だけど、と付け足すように言われた。
惹かれる条件だった。
『……他の神亀のヤツらは、いやがってねぇのか?』
『うーん……怖がってるヤツはいるかな。でもそれは死神さんに対してじゃなくて、元々ホラーやオカルトが苦手なだけだしなあ……。ウチは基本、仲間には激甘だから、信頼を得たら勝ちだよ』
『得られなかったら?』
『すでに俺から得てるから問題なし!』
『……逆になんで信頼してんだよ』
『俺、何度か、死神さんとこの神社に行ったことがあって。そこで父親らしき人と仲良さげにいるところ見てさ。それから俺の中では、親思いのやさしい少年ってイメージが強いんだよね』
彼が、人気者なワケがわかる気がした。
自分中心に乗せているようで、その実、俺の思いをちゃんと汲み取ろうとしてる。
俺も、あっという間に、初対面の男を信頼しかけていた。
このまま信頼しても、きっと、罰は当たらないだろう。
『……死神って呼ぶのやめろ。魁運でいい』
『!! わかった。魁運……カイね!』
『略すのかよ』
『俺のことは、繭でいいよ。これからよろしく』
『……ああ』
そうして、俺は、神亀の幹部になった。
翌日には、「死神」と「神亀」の名がセットで、町全体に知れ渡っていた。
繭の思惑は的中し、他のチームや不良どもへの威嚇と牽制に効果的に働いたんだっけか。