死んでもあなたに愛されたい
「白雪組を敵に回してもいいことはないと思うぞ」
「……し、しらゆき、ぐみ……?」
って、あの!?
神亀に入る前から、その名は知っていた。
ここらじゃ有名なヤクザだ。
この区域のどこかに拠点を構えているとはうわさされていたが……まさか、こいつらとは……。
ドクン、ドクンッ……!
心臓の奥で、鼓動の波が荒ぶり始める。
それじゃあ、ひとみは……。
いつもへらへらして、バカ正直で、人なつっこい。
そんな、あいつが……?
血の匂いの染みついた世界とつながりがあったとは、とうてい想像がつかない。
「手を引くなら今だ。今なら特別に目をつむってやろう」
足がすくむ。
男たちは少しずつ重圧感ある空気をかもし出している。
本職の殺気、ハンパじゃねぇ。
でも。
それでも、俺は……!
「……ほう? よほど戦いたいようだな?」
「っ、」
「白雪組を敵に回すなど、そんな自殺行為を誰が好き好んでしましょうか」
「親父……!」
内心すんげぇ臆している俺の隣に、親父がどんと立ちはだかった。
緊迫感が和らいでいく。
なんて頼もしい父親なんだろう。
「わたしたちは本当に何も知らないのです。どうぞお引き取りください」
「……親子ともに知らぬ存ぜぬをとおすか」
「命知らずな人たちですね」