死んでもあなたに愛されたい


いやな予感がする。

おそるおそる顔を上げれば。




「……か、魁運! その腕……!」




魁運の右腕。

そこに、3秒前までなかった傷があった。



なんで……。



シャツの布生地が切れ、皮膚には線状の生傷。

赤い血がじわじわとあふれてくる。




「魁運、この傷……」


「せ、静電気か何かだろ」




うそつき。

何、静電気って。ごまかすのへたくそ。


そこも好きなんだけど。



何も言えずにいると、地面に光るものを見つけた。

カッターの刃だ。


これがどこからか飛んできて、そのせいで魁運に傷が……?



あたしがちょこっと妄想している間に、なんでこんなことに……。


……まさかとは思うけど、ウチのもんのしわざじゃないよね?



突然抱きしめてくれたのも、あたしをかばってくれたのかな。


傷が残ったら責任とるから安心してね!


旦那様(予定)を傷つけやがった犯人も安心して。

すぐにどん底に堕としてあげる。




「魁運、痛くない?」


「ああ。ただのかすり傷だ」


「……っ、いたいのいたいのとんでけー!」




ガバッ!と勢いよく魁運の首に腕を回した。

ぎゅうっと力いっぱい抱きしめる。


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