死んでもあなたに愛されたい
噛み跡
「いただきます!」
元気はつらつな、あたしの声。
……かと思うじゃん?
実はちがうんだよ。
「こんなごちそう、本当にいいんですか?」
食卓に並ぶ、豪勢な夕食は、あたしのため。
……かと思うじゃん?
うん、ちがうんだよ。
「あ、これ、好きな味です!」
魁運お手製の煮物は、あたし好みに味付け。
……かと思うじゃん?
そう! ちがくない! 大正解!
だから、断じて、
「もしかして、わたしの好みに合わせてくれたんですか?」
「NOーーー!!!」
自惚れるべからず!
「ひぃちゃん、食べながら叫ぶなんて、お行儀がわるいよ」
「~~~!!」
つぅちゃんめ!
元はと言えば、つぅちゃんが……!
このおかしな状況について説明しよう。
学校から魁運と帰ってくると、なぜか永鳥家には、制服姿のつぅちゃんと赤羽くんがいて。
なんでも巫女神楽の打ち合わせに来たんだとか。
日が暮れてきて、おじ様の計らいで、一緒に居間でごはんを食べることに。
今日の夕食当番である魁運と、あたしも少し手伝って、お客様がいるということでいつもよりごちそうを作った。
しかし!
その煮物は、魁運があたしの好みを聞きながら、愛情こめて作ってくれたもの。
つぅちゃんの好みでは、なーい!