イケメン拾った!魔法を隠して慎ましく?スローライフ…できてない!!
キュリー伯爵の苦悩
「ライアンは?」
息子であるライアンを保護してはや三年。執務室で南の辺境伯爵、ロイド・キュリーは第二騎士団元副隊長のレオナルド・フィーバーを呼び出した。今は隊長だ。
第三子ながら親思いのがんばり屋の息子は自分が追われたマルクス国の愚王の勅命で要るかもわからない魔女狩りに向かわされ、途中不思議で不可解な事故により消息を断った。息子が率いた国王の私兵は全滅したそうだ。
ライアンが進言したことで我が領地に派遣され難を逃れた息子の部下達は思い思いにライアンの安否を心配して、領地が落ち着いたのを見計らい捜索に乗り出してくれていた。
捜索から一ヶ月と少しばかり経った頃、国地に嵐が吹き荒れたその日吉報があった。
「ライアン隊長、見つかりました!」
「なにっ!?」
北の更に奥に入りかけた捜索隊が急な豪雨に足止めを食らっていたとき……
ウォーン!
と狼の遠吠えが聞こえ、警戒を強めたときだったそうだ。
急ごしらえのテントを人が叩くような音が聞こえ、銃を構えて外を見たとき……ライアンが倒れていたというのだ。
奇跡と言うべきか、無事に我が領地に連れて帰れた我が息子は記憶が無くなっていた。国に報告はしたが、記憶を無くすようなバカは用無しだ!と。なので我が領地にてライアンを静養させることにした。
いくら後悔しても遅いのだ。
きっと魔女は存在したのだ。あの色狂いの愚王の為に息子はきっと魔女の毒牙に…
もっと早くに領地に戻していたら……いや、きっと違うのだ。
「伯爵様…隊長は変わらず帰らねばならないんだとおっしゃってます。心労からか髪も銀色に…素敵な深いブルーでしたのに」
レオナルドは深く拳を握り片手で手首を強く掴んでいた。握った拳からは血が滴っている…彼も悔しいのだ。
「レオナルド…レオ。冷静になれ」
「しかし館様…」
レオはライアンの乳兄弟だ。
妻が早く亡くなり乳母だったレオの母親に二人とも育てられた。
「……魔女め、許さない」
「違うぞ、レオ」
握りすぎて震えだした腕を包む。
「憎むは魔女ではない。色欲にてライアンを駆り出した愚王であると私はおもう」
「しかしっ…」
「入ってはならない禁忌にライアンは入ってしまった。侵さねば本来何も起こらなかった。そして怒らなかった…守るものが怒ったのだよ」
「それは…」
過去の惨劇もそうだった。
戦力を我が物にしたい欲を出さなかったら、集落に手を出さなければ、赤ん坊を拐わなければ……
自然の神々が怒らない訳がないではないか。
あぁ、でもどうか…
「館様?…」
「神よ…どうか罰は私に。息子は悪くありませぬ、きっとなにか、小さな小さな何かですが力有るどなたかの気持ちに触れられたのでしょうから。」
両の手を組み北をめがけて床に頭を擦り付けた。
すまぬ、息子よ。ライアン、すまぬ。
「私の命を差し出します!息子は何かを残したから私に帰ってきました。だからどうか…」
「館様!」
「ライアンに心を…あの子に心を返してやってくださいませ!!」
あとは涙と共に嗚咽にしかならなかった。
あの心根の優しい息子がどこかに帰りたいなら本心だろう。惑わされたりなんかするものか!帰らせてやりたいのだよ……私の命など厭わない。いつだって奪って構わない。
レオが泣きながら止めるのも聞かずにただひたすらに、額が擦りきれるのも構わず北に向かい手を合わせ続けた。
息子であるライアンを保護してはや三年。執務室で南の辺境伯爵、ロイド・キュリーは第二騎士団元副隊長のレオナルド・フィーバーを呼び出した。今は隊長だ。
第三子ながら親思いのがんばり屋の息子は自分が追われたマルクス国の愚王の勅命で要るかもわからない魔女狩りに向かわされ、途中不思議で不可解な事故により消息を断った。息子が率いた国王の私兵は全滅したそうだ。
ライアンが進言したことで我が領地に派遣され難を逃れた息子の部下達は思い思いにライアンの安否を心配して、領地が落ち着いたのを見計らい捜索に乗り出してくれていた。
捜索から一ヶ月と少しばかり経った頃、国地に嵐が吹き荒れたその日吉報があった。
「ライアン隊長、見つかりました!」
「なにっ!?」
北の更に奥に入りかけた捜索隊が急な豪雨に足止めを食らっていたとき……
ウォーン!
と狼の遠吠えが聞こえ、警戒を強めたときだったそうだ。
急ごしらえのテントを人が叩くような音が聞こえ、銃を構えて外を見たとき……ライアンが倒れていたというのだ。
奇跡と言うべきか、無事に我が領地に連れて帰れた我が息子は記憶が無くなっていた。国に報告はしたが、記憶を無くすようなバカは用無しだ!と。なので我が領地にてライアンを静養させることにした。
いくら後悔しても遅いのだ。
きっと魔女は存在したのだ。あの色狂いの愚王の為に息子はきっと魔女の毒牙に…
もっと早くに領地に戻していたら……いや、きっと違うのだ。
「伯爵様…隊長は変わらず帰らねばならないんだとおっしゃってます。心労からか髪も銀色に…素敵な深いブルーでしたのに」
レオナルドは深く拳を握り片手で手首を強く掴んでいた。握った拳からは血が滴っている…彼も悔しいのだ。
「レオナルド…レオ。冷静になれ」
「しかし館様…」
レオはライアンの乳兄弟だ。
妻が早く亡くなり乳母だったレオの母親に二人とも育てられた。
「……魔女め、許さない」
「違うぞ、レオ」
握りすぎて震えだした腕を包む。
「憎むは魔女ではない。色欲にてライアンを駆り出した愚王であると私はおもう」
「しかしっ…」
「入ってはならない禁忌にライアンは入ってしまった。侵さねば本来何も起こらなかった。そして怒らなかった…守るものが怒ったのだよ」
「それは…」
過去の惨劇もそうだった。
戦力を我が物にしたい欲を出さなかったら、集落に手を出さなければ、赤ん坊を拐わなければ……
自然の神々が怒らない訳がないではないか。
あぁ、でもどうか…
「館様?…」
「神よ…どうか罰は私に。息子は悪くありませぬ、きっとなにか、小さな小さな何かですが力有るどなたかの気持ちに触れられたのでしょうから。」
両の手を組み北をめがけて床に頭を擦り付けた。
すまぬ、息子よ。ライアン、すまぬ。
「私の命を差し出します!息子は何かを残したから私に帰ってきました。だからどうか…」
「館様!」
「ライアンに心を…あの子に心を返してやってくださいませ!!」
あとは涙と共に嗚咽にしかならなかった。
あの心根の優しい息子がどこかに帰りたいなら本心だろう。惑わされたりなんかするものか!帰らせてやりたいのだよ……私の命など厭わない。いつだって奪って構わない。
レオが泣きながら止めるのも聞かずにただひたすらに、額が擦りきれるのも構わず北に向かい手を合わせ続けた。