策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
「・・・・日葵さん、日葵さん、どうしたの!ねえ、嫌だよ。返事をして」
毬ちゃんが去った後、気を失っていたのだろうか?
日葵が目を開けると、目の前には、濡れ髪にパンツ一枚の勇気と、同じくびしょ濡れの柊が息を切らして駆けつけていた。
勇気の腕には毬ちゃんが抱かれている。
゛人の言葉を理解できる賢い娘なのよ🖤゛と言っていた、義母・真佐子の言葉は本当なのだ、と日葵は確信した。
「毬ちゃん、勇気くんを呼んで来てくれたんだ・・・ありがとうね」
毬ちゃんは勇気の腕から飛び降りると、日葵の顔に鼻を寄せてフンフンとならした。
「兄さんに連絡するね。日葵さんが先にタクシーで帰ったことも兄さんには連絡してあるんだ。もうすぐ帰ってくるかもしれないから負けないで、頑張って」
涙目の勇気には、相当の精神的な負担を負わせてしまったのだろうと、日葵は後悔した。
ふとお腹を押さえると胎動がない。
痛みはさることながら、その事も日葵を不安にさせた。
泣き顔の勇気を不安にさせるわけにはいかない。
日葵は痛みがあることを悟らせないように微笑みながら、
「勇気くん、悪いんだけどリビングからスマホを持ってきてくれるかな?それと、お水もお願い」
「わかった!すぐに持ってくるよ」
涙を拭った勇気は、笑顔を作ると一目散にリビングに駆けて行った。