策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
「肩が出る・・・?はっ?凧糸?あ、ああ、多分キッチンにあったはずだ」

凧糸という、場違いなワードに突っ込む余裕は陽生にも日葵にもない。

「勇気、キッチンの引き出しから凧糸を持ってきてくれるか?あとはバスタオルを数枚」

「わかった。任せて、兄さん」

出番のなくなった自分にも出来ることはあるのだと、勇気は笑顔を見せてキッチンへ向かった。

「もう、お産は止められないな・・・覚悟を決めよう、日葵」

「陽生さん・・・」

素人がどこまでできるかわからない。

でも、産まれてくる赤ちゃんには精一杯のことをしたい。

日葵は頷いきつつ、それでもいきみを逃がそうと努力していた。


「バゥ!」

その時、日葵の耳に、聞きなれた頼りがいのある相棒、柊の声が聞こえた。

息を切らし駆け込んできた柊の後ろには、大きな医療カバンを抱えた高森先生と、担当助産師の水流さんが控えていた。

まさに救世主、グッドタイミングである。
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