策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
゛なんという感動だろう゛

血と胎脂まみれの我が子は正直、美しくはない。

しかし、生命力に溢れる産声と、しなやかに、くねくねと動くその動作は神秘的で神々しかった。

「おめでとう。元気な女の子ですよ」

満面の笑みで娘を紹介してくれる高森先生は、素早く臍帯クリップでへその緒を2ヵ所とめると、その真ん中を

゛バチン゛

と清潔なハサミで切り、産まれたばかりの我が子を日葵の胸の上にのせてくれた。

「ようこそ。お姫様」

日葵は、裸の胸に感じる我が子の温かさに感動しながら先ほどまで自分の股に挟まっていた、固いけど柔らかな頭を撫でた。

出産直後に母子がこうして裸の肌を合わせるスキンシップは、母子の愛着形成によい影響を与えるらしい。

意図せず自宅分娩となったが、陣痛も長引かずスムーズな分娩だったといえなくもない。

゛これが病院ならば・・・だけどね゛

「お姫様も頑張ったな。やはり予想通り、お前は日葵の次に可愛いぞ」

娘を目にすれば、日葵への溺愛も少しは緩和されるかと日葵は少し期待していたのだが、やはり、陽生は全くぶれないようだった。

それよりもむしろ・・・

「日葵、お疲れ様。そんなに血が出て大丈夫なのか?先生、病院には行かなくてもいいでしょうか?」

と、途端に日葵を心配し始める始末。

「あら、入院したら日葵ちゃんと離ればなれになるけどあなたはそれで大丈夫なのかしら?」

高森先生の意地悪な返しに

「いえ。もう日葵とは絶対に離れません。先生が通って下さい」

と、即答して笑われていた。

トラブルがあった分だけ執着は増しそうだ。

その後、

毬ちゃんを抱っこして恐る恐る近づいてきた勇気と柊も加わり、新しく家族となったお姫様を囲む。

そんな一時を満喫させてもらったあと、

「それでは、これからお姫様を産湯できれいにして参りますね。それが済みましたら再びこちらに戻って参ります」

という恭しい水流助産師の言葉で、お姫様は一時退室となった。

彼女も゛侍女役゛ノリノリで笑った。
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