策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
お姫様が入浴中、日葵は先生から処置を受けた。

もちろん、勇気と柊、毬ちゃんは退室だ。

陽生は側にいると渋ったため、高森先生は笑いながらもそれを許してくれた。

胎盤の処理とか、会陰の処理とか・・・。

子供が大きいと会陰が割けてしまい、縫合しなければならないこともあるらしいが、日葵はあまり力まずに済んだ分、ほぼ処置は必要ないと言われた。

しばらくしてすんなりと出てきてくれた胎盤を確認する高森先生は、

「この臍帯クリップの代わりになるのが凧糸だったのよ。最近は便利グッズが増えたわよねぇ」

と話す。

昔はへその緒を紐で縛るのが一般的だったと、高森先生に聞かされた。

胎盤と子供が繋がったままではいけない。

そもそも胎児循環と生まれてからの循環は違うとか何とか・・・。

とにかく、安全に胎盤と子どもを切り離す必要があったらしい。

墜落分娩で、何もわからずに一人でいたらと思うと日葵はゾッとする。

それに、

胎盤がこうしてすんなり剥がれ出れば問題ないが、無理に剥がそうとしたり、胎盤の一部が子宮内に残ってしまえば後で大きな問題が起こると聞かされた。

医師や助産師不在での墜落分娩が、どれだけリスクを孕んでいるかと知るたびに、日葵は恐ろしくなった。

高齢出産の増加や、未成年の望まない妊娠がある現状では、ハイリスク妊娠と呼ばれ、病院での出産管理が望まれる。

自宅、助産院、病院。

それぞれの分娩の利点と欠点がある。

゛まあ、とにかく、無事に生まれてくれて良かった゛

「先生、陽生さん、本当にありがとう」

日葵は心の底からの安堵で、襲い来る睡魔に抗うことはできずに目を閉じた。

「こっちこそありがとう。おやすみ・・・」

眠りの世界に落ちる前に、そうやって頭を撫でる陽生の気配がたまらなく日葵を安心させてくれた。
< 24 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop