策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
「変わるに決まってるでしょう?それに勇気は今日、実家に帰す約束です。明日から学校が始まるんだから」

美暖が生まれたのは4月3日なので3日経った今日は4月6日。

そう、明日は、勇気の小学校の始業式なのである。

同じH県でもかなり田舎の方にある真島本家は、この家からは数十キロ離れたところにある。

そんなところにある小学校に勇気がここから通えるはずはないわけで・・・。

勇気と毬ちゃんは、明日、本家に帰ることになっており、真島夫妻は彼を迎えがてらに陽生と日葵、美暖に会いに来たのだった。

「・・・僕、転校しちゃダメかな?みんなと離れたくないよ」

゛兄には絶対服従゛

をモットーの勇気にしては珍しい要望だった。

「・・・」

年の離れた弟を可愛がってきた陽生だ。

日葵のお産の前後に大活躍をみせ、陽生の無茶な要求にも応えてきた実績を前に、勇気の申し出を即拒否はできずに考え込んでいる。

「勇気、学校は明日からだ。そんなに簡単に転校の手続きなんてできないんだぞ?それに中学受験のための塾通いが始まるって言ってたじゃないか・・・」

しかし、やはり親子三人水入らずの環境という魅力には抗い難いのか(柊は勿論いるが)、陽生は理詰めで勇気を説得にかかってきた。

「・・・」

広いリビングになんとも言えない沈黙が走る。

「ふ、ふぇ・・・」

そんな耐え難いぎこちなさの中、戸惑っていた日葵を助けたのは、空気の読めるお姫様、美暖だった。

「あ、授乳の時間みたいです。私、寝室で母乳をあげてきますね。その前に、お義母様、オムツ換えてもいいですか?」

「ええ、勿論。私が換えてあげるわ」

パァっと花咲くような笑顔になったバァバとジィジにオムツ交換をお任せする。

「僕オムツとって来る」

居心地悪そうになっていた勇気もお手伝いしようと気持ちを切り替えたようだ。

゛美暖、グッジョブ!゛

日葵は内心親指を立てて、娘を褒め称えた。
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