策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
数時間の滞在を経て、日葵の両親と祖父母は真島家をあとにした。

帰りにH県のショッピングモールで買い物をするのだそうだ。

祖母が陽生に贈りたいお菓子を作るために、手に入りにくい材料をそこで買いたいと言い出したのだとか。

゛何かに意欲を持つことは素晴らしい゛

゛ご当地アイドルの追っかけも無駄じゃない゛

と日葵は思った。

つかの間の賑やかさが消え、静けさを取り戻した真島家に魅力的な陽生のテノールボイスが響く。

「今日はやけに近隣の物音が響くな?工事か何かやってるのか?」

さっきから考え事をしているような仕草をみせていた陽生がボソッと呟いた。

そういえば、朝から何やら工事するような音が響いていた気がする。

゛でも、事前に挨拶がないなんて変だな?゛

と日葵も思ったが、

「ふ、ふえ」

その物音になのか、呟いた陽生の声に反応したのか、美暖がぐすり始めた。

「オムツかな?」

子育てに待ったはない。

しかも新生児ならなおさらだ。

考えている間もなく、次の対応を迫られる。

「日葵は座ってろ。たくさんお客さんが来て疲れただろう?オムツなら俺が換えるから」

しかし、ちょっとヤンデレ気味とはいえ、日葵には頼もしい夫がいる。

少し離れたところから、柊がビニールに入っているオムツを咥えて走ってきた。

頼もしい相棒もいる。

考え事も、息つく暇もない子育てだが、何とかこの面子でやっていけそうだ、と日葵は微笑んで育児に勤しむのだった。
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