策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
「自称、日葵さん命の陽生も大したことはないな。妻の心をオープンにさせてこそ頼りがいのある夫といえるのに・・・」

゛まさか、実の息子に喧嘩を売るのではあるまいな?゛

ほんわかと、それでもハッキリと呟いた孝明の言葉に、日葵はピタリと泣き止み真佐子の体から離れて顔を上げた。

「へえ、父さんはよほど僕を怒らせたいとみえる」

眼光鋭く実父を見つめる陽生の目も笑ってはいない。

「私らを除け者にしようとしたぱっと出の青二才が何をほざく。その気になればお前の会社など簡単に潰せるんだぞ?」

「父さんがその気なら僕だって下剋上も辞さないつもりですが?」

゛単に孫の面倒をみせるかみせないかで、ものすごく面倒なことになっている・・・゛

安心して冷静になった日葵は、場の雰囲気を過敏に察知できるできた嫁である。

「お義父様、お隣に引っ越してきて来てくださったなんて本当に心強いです。ねえ、陽生さん、お二人のご厚意に甘えて、これから少しでもベッドに横になりませんか?何なら二人で・・・」

日葵の甘えた言葉に、険しかった陽生の表情が穏やかに変化する。

「ねえ、日葵さん?母乳にこだわりがないのなら、ミルクも試してみない?そうすれば断然お世話が楽になるわよ」

用意周到な真佐子は、世に流通する人気の粉ミルクと哺乳瓶、乳首を数種類準備していた。

粉ミルクにアレルギーがないことは、自宅分娩コースのフォローアップの時に医師が確認済みだった。

日葵は完全母乳にこだわるつもりはない。

免疫学的に母乳が良いということは誰もが知るところだが、それにこだわるあまり、体を壊して、実の子を虐待してしまうまでメンタルが追い詰められるのは違うと思う。

「陽生さんも顔色が悪いわ。今日の仕事はそれぐらいにして、日葵さんと横になりなさいな」

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