策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
旧蒼井家の隣の家は、数年前から空き家になっていることを真島夫妻は把握していた。

陽生と日葵の交際が発覚したときから、真島夫妻はその家を買い取ることを決め、陽生にはバレないように、慎重に内装工事を済ませていた。

残るは外装のみ。

こうなると、セキュリティ万全の陽生夫妻宅の外壁が厄介だが、両家の間にのみ通じる出入り口を作れば問題はないだろう。

陽生が契約しているセキュリティ会社は、H県では有数の大地主である真島本家が所有する会社の子会社だ。

孝明の一言で何でも融通が効く。

子育てに疲れてくる出産後4日目頃を目処に、真島夫妻は慎重に工事を計画した。

「本当に可愛いわねえ。私達が若いうちに孫に出会えて良かったわ」

現在、真佐子は53歳。

孝明は57歳と、美暖にとっては比較的若い祖父母だ。

「ミルクを飲んだらよく眠っているし、もしかしたら日葵さんは疲労で母乳の出が悪くなっていたのかもね。それで美暖ちゃん、おなかが空いて泣き止まなかった可能性があるわ」

かといって、そんなことを産後のメンタルが不安定な日葵に正直に伝えるわけにはいかない。

「今頃、日葵さんも陽生と一緒に体をやすめていることだろう。陽生が日葵さんの寝顔に見とれている間に、我々も可愛い孫の寝顔を満喫しようじゃないか」

スマホの写真アプリを起動しながら、孝明が嬉しそうに呟く。

「今のうちに私は夕飯の支度をしておくわ。勇気さん、孝明さんと一緒に、美暖ちゃんをよろしくね」

「任せて。僕は美暖ちゃんを眺めながら塾の課題を済ませるよ」

真島本家の連携プレーが炸裂。

何もわからない美暖は、小さなあくびを1つして、祖父母と叔父をデレデレにさせていた。

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