策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
「今回はこのような不祥事が起き、皆様を不安にさせてしまい誠に申し訳ありませんでした。理事長である私からも一言謝罪させて下さい」

深々とお辞儀をする孝明じぃじは格好いいな、と美暖は思った。

だが、虐められた張本人の祖父なのに謝罪する必要があるのだろうか?と不服にも思っていた。

「おやめください、真島様。これでは私達の立場がありません」

頭を下げ続けている孝明に駆け寄ってきたのは、あの野原議員と田中社長だった。

自ら墓穴を掘るとは、まさにこの事である。

「おや、なぜ私が君達の立場を気遣う必要が?私は理事長として保護者の方々に謝罪しているだけで虐められた孫の祖父としてここに立っているわけではないのだが」

孝明の言葉に、保護者達は、野原と田中が加害者側の父兄だと理解してざわついた。

「失敬、今の失言は、被害者となった者の怒りが噴出してしまったとご容赦願いたい」

再び頭を下げた孝明じぃじの顔は、うつむいた状態で笑っているに違いない。

美暖は確信していた。

父兄の心情は、今の一連の出来事のお陰で、理事長としての責任を問い詰めるよりも、虐められた孫を心配しつつも頭を下げた孝明の男気に傾倒していることだろう。

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