策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
「えっ?これって・・・」

美暖の頬が薔薇色に染まる。

美暖が一番欲しいと思っていたもの。

そして、絶対に手に入らないと思っていたもの・・・。

熱望しても手に入らないそれは、陽生との心の距離を感じたきっかけでもあった。

「もう少し待てば美暖ちゃんもお姉ちゃんになるのよ」

見せられたのは、美暖の妹か弟になる赤ちゃん、その子の超音波写真だった。

「これ、美暖が日葵ママのお腹にいたときと同じ」

「そうだよ。美暖がパパにお願いしてくれたから、赤ちゃんがママのお腹にやって来てくれたの」

「でも陽生パパは、美暖がきょうだい欲しいって言ったとき返事してくれなかった」

美暖が涙で瞳を潤ませながら見上げると

「あのときはまだタイミングが悪かった。日葵の仕事や体調のこともあるし、何より赤ちゃんが来てくれるかもわからないのにいい加減なことはいえないだろ?」

美暖の頭を撫でる陽生パパは、優しい表情をしていた。

「パパありがとう!大好き」

゛パパは美暖のことが鬱陶しいわけでも嫌いなわけでもなかった゛

嬉しさと感動で、美暖は陽生に抱きついた。

「こらこら、大好きという言葉は、大切な誰かが出来たときまで取っておけ。親子なら大好きでいてくれることくらい当たり前にわかることだからな」

「美暖は言わないとわからないよ」

「今伝えたからわかったな。ほら、玲音が睨んでるぞ。あいつにも教えてやれ。あまり妬かせるな」

「うん。あのね、玲音くん、美暖に弟か妹ができるの!」

元気良く突進してくる美暖を抱きとめた玲音も嬉しそうだ。

「もう、陽生さんたら、美暖を不安にさせてたのね」

「日葵の体調と都合が優先に決まってるだろ?ほら、風邪が冷たくなってきた。中に入ろう。日葵に何かあったら生きていけない」

娘にはツンデレでも、日葵にはデレデレの陽生は、いくつになってもぶれない日葵バカだった。

まだ、少ししか膨らんでいないお腹を擦りながら、陽生が日葵を室内に誘導する姿は、まるで王子さまのようだと美暖は思った。

「えっ?日葵に赤ちゃんができたの?」

「何ですって?孫がもう一人生まれるの?こうしちゃいられないわ」

蘭と真佐子の雄叫びが真島家にこだました。

中庭で遊ぶ柊と毬ちゃんは変わらずマイペースだ。

策士な面々が織り成す真島家の日常生活は、波乱を乗り越えて、穏やかに過ぎていく・・・

はずだ・・・。



fin
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