策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
冷蔵庫を開けて、遅くなった昼御飯の材料は何にしようかと物色をする。

「夏だから素麺でもゆがこうかな」

日葵は野菜室から葱と大葉、みょうがを取り出すと、それらを洗ってからまな板にのせた。

「うっ・・・!」

そのとき、生理痛よりも何倍も大きな激痛が、日葵の下腹部を襲った。

ぐいぐいと恥骨が押されるような感覚。

臨海公園の四阿で感じた時よりも下に下がっている気がする。

しかも一向に痛みの波が引かない。

「ちょっとやばいかも・・・」

不幸なことに勇気も柊もお風呂だ。

スマホはリビングに置いたまま。

立っていられなくなって、しゃがみこむ日葵。

絶望に気を失いそうになる日葵の横に、小さな物体が影を作った。

「・・・毬ちゃん・・・」

ぴょんぴょん、と優雅な動きで近づいてきたイングリッシュロップの耳垂れウサギ、毬ちゃんは、倒れこむ日葵の顔にフンフンと顔を近づけて来た。

それはまるで、日葵を励ますかのような仕草で・・・。

「毬ちゃん、勇気、くんを、呼んで来て・・・くれるかな?って無理だよね・・・」

痛みに顔をしかめながら、苦笑する日葵を見つめたかと思うと、毬ちゃんはこれまでにない早さでキッチンを出て行った。

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