海の向こうで
「桜龍のお姫様の情報は、結構持ちきりなんだよ。だってあの大西海の双子の妹なんだもんな。どういうやつか気になるじゃん。写真も出回ってるらしいけど、写真より全然綺麗だな」
なんなの、こいつ。
「ごめんなさい、離してください。私、友達と帰ろうとしてるんですけど」
「ああ、友達ってのはこいつのことか?」
その男がさしたのは、ほかの男にぐったりともたれかかってる朱里だった。
「朱里っ!」
私は駆けよろうとしたが、またその男にぎゅっと腕を掴まれた。
「朱里に何したの!」
「別に、すこし薬を嗅がせて気絶させただけ」
「変な薬を嗅がせたんじゃないでしょうね」
「自分より、友達の心配か」
その男は可笑しそうに笑う。
「ま、ここで逃げてもいいよ。ただし、このお友達はどうなるかな。この子もなかなか可愛いから、下っ端の子たちのおやつにでもしちゃおうかな」
「それはやめて!」
私は叫んだ。
「じゃ、おとなしくついてくるんだな」
「…」
私は黙ったままこくりと頷いた。