海の向こうで
「なんとなくではやって欲しくないです」
「じゃあ、なんとなくじゃなきゃいいってわけ?俺が海華ちゃんのことを好きなら、海華ちゃんは俺のことを好きじゃなくてもいいわけ?」
なにこの人。
一人称が“僕”から“俺”に変わってる。
流石にやばいと思い、私はだっと倉庫の端まで逃げる。
「海華ちゃん。追いかけっこしても結局、海華ちゃんはここから出れないんだよ?」
その男はじりじりと詰め寄ってくる。
「いや…っ」
私は倉庫じゅうを逃げ回る。
それをくすくすと笑いながら追いかけてくるその男。
「わあっ⁉︎」
私は後ろを見ながら逃げていたせいで、何かに躓いて転んでしまった。
「はい、もう時間切れだね」
いつのまにか、顔を上げるとあの男がいた。